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Friday, February 16, 2007

大型ディスプレイのマルチタッチインタフェース

Fast Companyという雑誌で、 ニューヨーク大学のJefferson Hanという人物が作った 大型のマルチタッチディスプレイパネルが特集されていた。 Han氏はTED会議でもデモを行ない人気を集めたらしい。 ビデオを見る限り、アプリケーションは派手ではあるが、装置や操作インタフェースは比較的普通に見える。 Fast Company誌の説明によると、 半透明な表示パネルの下を光線が通過しており、 指でパネルを押すと光線がそこに当たって散乱して光るのをカメラで検出するという原理らしく、 ソニーのHoloWallと似ているようである。 圧力を直接検出できるわけではないが、強く押すとそれだけ光の散乱が多くなるので、 ある程度は押した力を検出できるのだろう。

大型のタッチパネルディスプレイを使ったインタフェースに関しては、 特にCSCW (Computer-Supported Cooperative Work: 計算機による共働作業支援)の分野で多くの研究が行なわれてきた。 Xerox PARCでは大型ディスプレイを利用したCoLabという システムがかなり前に開発されていたし、 独GMDではi-Landというプロジェクトの一貫として DynaWallというシステムが開発されていたが、 これらのシステムは研究としては面白いものの、 実用的にさっぱり使われていないという大きな問題があった。 東京農工大の中川正樹氏/加藤直樹氏らは 文字認識のできる大型タッチパネルディスプレイを開発して授業などに活用していたようだが、 学外に広がるほどの影響力は無かったようである。 本当に便利に使うためにはまだ技術が不足しているのだろう。 計算機インタフェースの専門家である黒須正明氏ですら 「共働作業は液晶プロジェクタとノートパソコンを使うのが一番だ」 などと言っているところを見ても、 大型タッチパネルディスプレイはあまり人気が無いようである。

マルチタッチのユーザインタフェースもやはり 昔から多くの研究が行なわれているが、 一見便利そうに見えるものの、まだまだブレイクしていない。 Han氏がビデオの中で実演しているような「拡大/回転と移動を同時に実行」のような操作は 両手を使うと確かに簡単なはずだが、 右手と左手を同時に正確に動かすことは不可能だから、 多くの場合は別々に動かすのとあまり変わらないということなのかもしれない。

このように、 大型タッチパネルディスプレイもその上のマルチタッチインタフェースもいまひとつパッとしない状況なのにHan氏のデモが大ウケしたというのは、 参加者にとってそういうものが物珍しく、かつ氏の操作が秀逸だったということなのだろう。 多くの人が「マイノリティ・リポート」を思い出していたのかもしれない。 確かに格好よくできてはいたのだろうが、 これからガンガンあちこちで使われるようになるかどうかは怪しいように感じられる。

大型タッチパネルディスプレイをアートに利用するのはうまくいくようである。 画像が投影されたパネルを押すことにより画像が変化する Khronos Projectorという作品は 高い評価を得ていたし、 HoloWallの後継的システムはお台場の ソニーエクスプローラサイエンスという科学博物館で展示されている。 Han氏のビデオもインタフェースのデモというよりはパフォーマンスに近いように見えるのだが、 今後は実用になっていくのだろうか。

(マルチタッチインタフェースのサーベイは、 トロント大学で長年ユーザインタフェースの研究会を行なってきたBill Buxton氏 が書いたものである。 Buxton氏はユーザインタフェースの分野で最も論文披参照数が多い有名な研究者なのだが、 最近Microsoftに入社したらしい。 Microsoftから今後面白いインタフェースが出てくるのだろうか...)

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